台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


(……手)

濃紺が包む爽真の右腕に、透き通るほど白くて華奢な手が添えられている。

私たちに気付かず、爽真の右隣で楽しそうに何か喋っている美玲の手が、爽真に、触れている。


「――っ、」


バクンと破裂しそうな自分の胸の音に驚いて、大きく瞬きをひとつ。


私の視線の先を追った紫苑が、そこに誰がいたかに気付く。
瞬間、すぐに紫苑の目は2人を追っているはずのカメラを探した。


「瑠奈ちゃん、爽真くん達のちょっと後ろにカメラマン。
撮ってるよ」


紫苑が、目線を前にしたままほとんど唇を動かさずにそう言った。


「俺はこのまま気づかないフリですれ違うけど――
瑠奈ちゃんは、どうする?」


ドク、と胸が凹む。

紫苑×美玲の絵的に、お互いを思いながら違う相手を連れて、気付かないまますれ違う――

多分紫苑は、そんな切ない絵を想定して判断している。

……じゃあ、“瑠奈”がとるべき行動は?


紫苑は美玲に気づかない。
でも、美玲はどこかで気付くかもしれない。

その時、どうなっていたら正解か。


「……」

虚ろに見る美玲は人混みに紛れないように、やっぱり爽真の腕に手を置いている。


(なんで。美玲の矢印は紫苑でしょ)


迷子になりそうな思考を、“瑠奈”の演技に引き戻す。

“瑠奈”なら、美玲の存在に気付く。
そしたら、紫苑と楽しんでいるアピールをして牽制する。

だから、2人を、美玲を、見つめたまま。

掬いかけて止めていた手を動かして、するりと紫苑の指を絡めとった。