人の流れはそれなりにあるせいか、だんだんと距離が詰まってきているのに紫苑も美玲もお互いに気づく気配がない。
でも、私と、爽真は。
気付いてしまった。
人の動きが急にフレーム落ちしたようにスローモーションになって、喧騒が遠のく。
爽真はずっと、ブレずに私を見ている。
だから私も、目が逸らせなくて。
(そういえば今、 初めてまともに浴衣姿の爽真を見たかも)
あ。帯。
黒いのつけたんだ、律儀か。
夕闇に映える艶っぽい黒髪も、
何かを燻らせた夜色の目も。
意外と白い肌も、
すらりと高い背丈も。
その全部を浴衣の落ち着いた濃紺色が際立たせて、ずっと大人びて見えるから――
すごく遠い人に見えた。
「瑠奈ちゃん?」
紫苑が私の名前を呼んで、今いる場所に意識が戻る。
なのにもう一度、爽真の方を見てしまったのが間違いだった。



