台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


指は細いのに意外と大きな紫苑の手のひらを、若干引きながら見つめる。


この人、アホなの?


この間は誰の目もなかったからこの悪戯も許容できた。

でも今日は違う。

こんないつ誰に見られるかもわからない場所で、紫苑と仲良く手なんて繋げるわけないじゃん。


(わたあめ買う時、彩加達と鉢合わせたばっかりなのに。
ホント何考えてるの)


「……」

じっと真意を伺うように紫苑を見上げる。
その微笑みに、小悪魔の尻尾が見える。

「……瑠奈で遊んでない?紫苑くん」

「遊んでないよ、少しも」

『なわけあるかい!』

……とは言えないけど。

余裕顔の紫苑は、綺麗にニコニコ笑っている。

私が怪訝な顔をした瞬間、紫苑が私からわたあめを取り上げる。
その目が意地悪く細くなった。


「瑠奈ちゃんなら、この間みたくうまくやってくれるでしょ?」


紫苑の顔は、この前みたいな試してる目じゃなくて、完全に楽しんでいる顔。

できないの?って言われてるみたいで、ムッとした。


(このやろー、紫苑。いつかおぼえとけ)


差し出しているのかいないのか、微妙なニュアンスを醸す紫苑の左手に、奪おうとする意志を持った右手を伸ばす。

その手が紫苑の手を掬いとりかけた時――

向こうから、美玲と並んで歩いてきた爽真と目が合った。