台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


「よし、一匹」

カン、とポイのフレームが金属製の容器に当たる音と、紫苑の落ち着いた声がする。

紫苑の容器には赤い金魚。
そしてもう、二匹目に狙いを定めている。


ぼーっとして遅れをとってしまった。
今日はなんかダメな日だな。


すっかり水に浸かったポイのそばを金魚が通って、咄嗟に掬い上げようとすると――


「あ」


ぽしゃん。
ポイに張られた和紙が、全部金魚に持っていかれた。


「あ」の顔のまま、紫苑と顔を見合わせる。

なんて言おうか。言葉を探していた直後。

「我々、次のペアに移動するので。
こちら一旦引き上げまーす」

背後から、撮影スタッフのカラッとした声が空気を切った。

「あ、はい。またあとで、よろしくお願いします」
「お願いしまーす……」

カメラの方に振り返って、紫苑と2人で会釈する。
くるりと金魚の方に向き直って、沈黙。

2人、なんとなく顔を見合わせる。

まずい、変な空気。

「もう破けちゃったぁ……あはは……」

お茶を濁すために、ただのフレームになったポイを私と紫苑の顔の間まで持ち上げて見せる。


「瑠奈ちゃんってさ、」

丸いフレーム越しに私の顔を見つめる紫苑が、綺麗な真顔で、一言。

「結構ポンコツ?」
「なんですと?」

あ。やば。
うっかり素でツッコんでしまった。