僕らの青春創作日記

「映画、すっごく楽しかったの!」

放課後の帰り道。

純恋ちゃんは頬を赤くしながらそう言った。

その顔は今にも笑い出しそうなくらい嬉しそうで、映画のことを思い出しているのが伝わってくる。

「途中ね、同じところで笑ったんだよ!」

そう言って、また楽しそうに笑った。

純恋ちゃんは本当に嬉しそうだった。

映画の内容よりも、遼くんと過ごした時間の話ばかりしている。

その笑顔を見るたびに、胸の奥が少しだけ痛んだ。

「しかもね! 帰りに『また一緒に行きたい』って言われたの!」

これってワンチャンあるかな。

期待と不安が入り混じった瞳で、純恋ちゃんがこちらを見つめる。

「うん。純恋ちゃんは可愛いし、大丈夫だと思う」

なぜか言葉が少しつっかえた。

「やっぱそうだよね!」

ぱっと花が咲くように笑う。

不安も迷いも吹き飛んだみたいな、眩しい笑顔だった。

もう、この話はしたくなかった。

息が詰まりそうになるから。

苦しくなるから。

それなのに――

「次、遊びに行くとき」

純恋ちゃんは言葉を続ける。

嫌な予感がした。

血の気が引いていくような。

胸の奥が冷たくなるような。

そんな感覚だった。

「その……」

今までで一番頬を赤く染めて、

「告白してみようかな……」

そう言った。

その瞬間。

頭の中が真っ白になった。

心臓が嫌な音を立てる。

ざわざわして。

苦しくて。

息がしづらい。

何なんだろう。

本当に意味がわからない。

こんな感情、初めてだった。

「鈴夏……?」

不安そうな声ではっとする。

気づけば立ち止まっていた。

しまった。

変な顔をしていたかもしれない。

慌てて口元を緩める。

「うん、いいと思う」

「純恋ちゃんなら大丈夫だよ」

ありきたりな言葉しか出てこなかった。

本当はもっと何か言うべきだったのかもしれない。

けれど、今の私には無理だった。

ちょうど分かれ道に差しかかる。

もうここにいたくなかった。

「じゃあ、私こっちだから」

純恋ちゃんの返事を待たずに歩き出す。

背中に視線を感じた。

きっと純恋ちゃんは何か言いたそうにしていたんだと思う。

でも振り返れなかった。

家までの道を、一人で歩く。

胸の奥がずっと苦しい。

純恋ちゃんは何も悪くない。

むしろ応援したかった。

応援しているはずだった。

なのに。

どうして告白の話を聞いたとき、あんなに苦しくなったんだろう。

どうして映画の話を聞くだけで嫌な気持ちになったんだろう。

どうして――

遼くんの隣にいる純恋ちゃんを見るたびに、胸が痛くなったんだろう。

足が止まる。

頭の中に浮かぶのは遼くんだった。

笑っている顔。

話しかけてくる声。

くだらない話をしている時間。

気づけば、そんなことばかり思い出している。

その瞬間。

胸の奥で何かが音を立てて繋がった。

ああ。

そういうことだったんだ。

私は。

遼くんが好きなんだ。

認めた途端、苦しさの理由がわかった。

純恋ちゃんが遼くんを好きだと言ったとき。

映画に行ったと聞いたとき。

告白すると聞いたとき。

全部。

嫉妬だった。

「……最悪」

小さく呟く。

だって私は。

純恋ちゃんを応援すると決めたのに。