✴✴✴
次の電車のアナウンスが流れる。
「あ……」
急に、現実に引き戻される。
陽太の手が自然に伸びた。
――けれど、途中で止まる。
小さく息を吐くと、そっと引っ込めた。
「陽太……」
もう一本、乗り過ごそうか。
そんな考えが頭をよぎる。
でも――
「じゃあ、気をつけて」
明るく言われて、その考えは消えた。
ドアが閉まっても、彼はホームに立っていた。
手を振る姿に、私はぎこちない笑顔を返す。
笑っていないと、喉の奥が詰まったものがこぼれ出そうだった。
電車が動き出す。
その瞬間――
陽太の口が動いた。
騒音にかき消されたのか。彼が声にしなかったのか。
読み取ろうとしたけど……分からなかった。



