ちょ、近すぎますってば蒔田さん!

 なんか、……すみませんでした。
 しゅんとするあたしを見て蒔田さんは笑って、
「とはいえ。……おまえのシャンプーのいい香りがして、……内心、どぎまぎしていた。これ、内緒な? 」

 神様仏様。
 あのとき放たれた雄の香りがあたしを手放そうとしません。
 強い香水を使っているわけでもないのに、爽やかで、男っぽくて。
 凛々しい蒔田さんのイメージにぴったりで。澄んだ、青のような香り。
 今生、未来永劫、蒔田さんから離れることはありません。

 そしてあたしは蒔田さんの首の後ろに手を回すと笑って、――彼の首筋に顔を近づけ、彼女としての特権を濫用する。

「蒔田さんの香り、あたし、……好きだな」

【完】