いなくなったおねえちゃん



 僕は、周りのひとを思いやることができる人間だと自負している。
 今朝も、苦しそうに歩いているひとを見て、肩を貸してあげた。
 その時、彼はぼそりと『僕は愚かだ』というようなことを言った。
 きっと彼はエゴイスティックな人間なんだ。
 そう考えると、その言葉は僕とは縁が無いと感じて、あまり記憶に残っていない。

 ああいうひとはきっと、彼女と結ばれることはできないだろう。
 彼女というのは、僕が今、片想いしている相手だ。
 彼女が近くにいる時、僕は僕を犠牲にして周りのひとを助けることができる。
 彼女は、今に、僕の優しさに気づいて振り向いてくれるはずだ。
 だって僕は、彼女が気づくような分かりやすい手伝いばかりをしていて、――。
 あ。
 僕は……周りを思いやっていたわけじゃ、なかったのか。
 僕の本当の姿は。
 周りよりも自分を優先する、エゴイスティックで利己的な人間だったんだ。