――さて、お客様。
今夜は、これにて店じまい。
楽しんでいただけましたか?
それとも、もう後悔していますか?
まあ、どちらでも構いません。
怖い話というものは、読んだ瞬間に終わるわけではありませんから。
部屋を暗くしたあと。
ひとりで廊下を歩くとき。
夜中、不意に目が覚めたその瞬間。
ふと思い出したら、もうこちらのものです。
――私の正体?
そんなの、決まっているじゃありませんか。
怪談屋ですよ。
夜にだけ店を開き、
誰かが拾ってきた怖い話を、こうして売っている怪談屋です。
……そう説明すると、みなさん揃って安心した顔をなさいます。
「なんだ、ただの変わった店主か」と。
ですが、不思議ですねぇ。
誰ひとりとして、
「どうやって話を集めているのか」は聞かない。
学校の噂も。
消えた人の話も。
“その後”まで知っている理由を。
……おや。
今さら気づいたんですか?
だって私、ずっと“聞く側”ではなく、“語り手側”の話をしていたでしょう?
それではまた、いつかの暗い夜に。
またのご来店を、心よりお待ちしています。
怪談屋より。



