「ふみ、そんな無防備だと喰っちゃうよ」
ズキズキと胸が軋んで、痛くて、苦しくて、どうしようもない。
それなのに――「ふみ」と名前を呼ばれたことだけは、どうしようもなく嬉しかった。
こんなときまで、私は静の声に喜んでしまう。
「〜〜っ、手出さないって言った……!」
必死に言い返せば、静はほんの少し眉を上げた。
「何言ってんの?“手”は出してないでしょ?」
「……!」
ああ言えばこう言う……!
確かに言葉通りならそうなのかもしれない。でも、そういう問題じゃない。
私がどれだけ驚いて、どれだけ心臓を鳴らしていたと思ってるの。
言葉にできない感情がぐちゃぐちゃになって、私はただ静を睨むことしかできなかった。
そんな私を見下ろしていた静が、やがてゆっくりと立ち上がって、爽やかで、それでいてどこか嘘くさい笑みを浮かべる。
「ふみさん。今度俺のリミッター外したら、容赦しませんからね」
その言葉の意味を考えるより先に、静はぴしゃりと襖を閉めた。
「……っ」



