「……ふみさん」
名前を呼ばれる。いつもの落ち着いた声。
でも、さっきよりほんの少しだけ低く聞こえた気がした。
私は恐る恐る顔を上げる。私よりずっと高い目線。自然と見上げる形になって、静の顔を下から覗き込む。
その瞬間だった。
静の頬が、ほんのり赤く染まっていることに気づいた。耳まで、少し赤い。
「……え?」
思わず目を瞬かせる。
静が……赤くなってる?あの静が?
いつも何を考えているのか分からない顔をしていて、学校では誰に話しかけられても余裕そうに笑っていて、
電車では人を震え上がらせるような顔をしていた、あの静が。
頬も、耳も、ほんのり赤い。
「……深澤くんにも嫉妬……してくれたのかなって思ったけど、違った?」
自分で口にしておきながら、恥ずかしくなって視線を落とす。
「髪だって……静に触られるの、ドキドキするけど、うれしいの……」
言ってしまった。とうとう、言ってしまった。
胸の奥にずっと隠していたことを、全部。



