「冗談ですよ。ふみさんには手出すなと親父にしつこく言われてますので」
「……おじいちゃん?」
頭の中が追いつかない。
今のは、冗談……?本当に……?
さっきの距離は?あの顔は?あの目は?
私の心臓が壊れそうなくらい跳ねたのは、全部なんだったの?
「だから、そんな強張らないでください」
クスッと笑って言われて、そこで初めて気がついた。
私……無意識に身体に力が入ってたんだ。
肩も、腕も、背中も。まるで何かに怯えるみたいに、ぎゅっと固まっていた。
でも、それは決して静が怖いからじゃない。襲われるのが怖いとか、そういう意味じゃない。
もちろん、あんなことを突然されたら驚くし、心臓にも悪い。
だけど――本当に怖かったのは、静に近づかれることじゃない。
近づかれて、嬉しいと思ってしまった自分のほうだった。
静が離れてしまったあとも、身体にはさっきの感覚が残っていた。
顔の近くにあった静の気配。低い声。私を見つめる目。
あんなに近くにいたのに、離れてしまえば急に部屋が広く感じる。



