だって。ほんの数センチしかない。
静の顔が、私の顔のすぐ上にある。鼻先が触れそうなくらい近い。息がかかりそうなくらい近い。
視線を少し下げれば、綺麗な唇が見える。静も動かない。
いつもなら何を考えているのか分からない顔をしているくせに、今はほんの少しだけ目を見開いている。
その瞳が、私をまっすぐ見つめている。それだけで心臓が、とんでもない速さで跳ね始めた。
ど、どうしよう。近い。近い近い近い!こんなの、無理。こんな距離で静の顔なんて見られない。
昔は平気だったはずなのに。子どもの頃なんて、隣に座って頭をくっつけて本を読んだことだってあった。
髪を触られたことも、手を繋いだことも、何度もあった。
でも今は違う。
今こうして至近距離にいる静は、昔の男の子とは全然違う。
低くなった声も、大きな身体も、広い肩も、整った顔も。
「……ふみさん?」
静の声が、また近くで響いた。
「……っ」
びくっと肩が跳ねる。



