私は慌てて靴を履き替え、立ち上がる。
そして、さっきまで掴まれていた右手を、左手でそっと隠すように握った。
寂しい、とか。そんなのは気のせい。絶対に気のせい。
人と触れ合ったことのない私にとって、静との再会は、一瞬で私に「寂しい」という感情を植え付けてしまうくらいには危険なんだ。
私は一人でいることに慣れたと思っていた。誰かに期待することも、誰かに触れてほしいと思うことも、いつの間にか諦めていたはずだった。
それなのに、静が帰ってきたたった数週間で、私はこんなにも簡単に心を揺らされている。
……だから、気をつけなきゃ。静は私のボディーガード。それ以上でも、それ以下でもない。
そう自分に言い聞かせながら、私は静の横へと並んだ。
「……帰ろっか」
「はい」
静はいつものように短く返事をする。
そして、何事もなかったように歩き出す。私もその隣を歩く。
けれど――さっきまで繋がれていた右手だけが、どうしても気になってしまう。
もう温度は残っていないはずなのに、そこだけ妙に熱いような気がして。
私はその手を見られないように、ぎゅっと握りしめた。
そうしていれば、この胸の中に生まれた小さな寂しさも、きっとそのうち消えてくれる。



