強く握られていたわけじゃない。ただ、逃げないようにするみたいに掴まれていただけ。
それなのに、その感触がまだ手に残っている。
でも今は、その熱がどんどん消えていく。
冷たい空気に触れるたび、さっきまで温かかった手が、少しずついつもの温度に戻っていく。
それを見ていると、胸の奥まで冷えていくような気がした。
「ふみさん?」
その声に、ハッと顔を上げる。
いつの間にか靴を履き替えたらしい静が、少し離れたところから私をじっと見つめていた。
「……え?」
「どうしました?」
「あ……ううん。なんでもない」
慌てて笑ってみせる。けれど、自分でも分かるくらい、その笑顔はぎこちなかった。
「ふみさん?」
「ほんとに大丈夫だから」
そう言って、急いで靴箱へ向かう。
静に変に思われたくない。こんなことで寂しいなんて思ったことも、もちろん言えるわけがない。
だって、おかしいでしょう?たった今まで手を繋いでいただけなのに、離れたら寂しいなんて。
そんなの、まるで――まるで、静と離れたくないみたいじゃない。



