初日の電車のことが脳裏に蘇る。
『こいつの会社潰そうかと』なんて、平然と言ってしまう人なのだ。しかも本人はいたって真面目な顔をしていた。
……お願いだから、なにもありませんように…。
そんなことを考えているうちに、ようやく昇降口まで辿り着いた。
静がピタッと足を止める。急に止まったせいで、私は勢い余って少しだけ前のめりになった。
「わ……っ」
なんとか踏みとどまって、静の背中を見上げる。
すると――静が、小さな声でぽつりと呟いた。
「……簡単になついてんじゃねーよ」
「え?」
聞き取れなかった。
今、なんて言った?
「静?何か言った?」
問いかけると、静がゆっくりと振り返る。
……そして。
「…………。」
ニコッと怖いくらいに綺麗な愛想笑いを浮かべた。
…こ、怖い。逆に怖いんですけど……!
さっきまであんなに無表情だったくせに、どうして急にそんな完璧な笑顔になるの!?
しかも目が全然笑ってない。
口元だけが綺麗に弧を描いていて、瞳の奥は妙に静かで、何を考えているのかさっぱり分からない。



