「ちょっと、待って……!」
私の声なんて聞こえていないのか、静はずんずんと進んでいく。
「静、歩くの速いって……!」
私と静では足の長さが全然違う。
同じ一歩でも、静にとっては普通の歩幅なのだろうけれど、私にとってはほとんど小走りだ。
引っ張られた手首も離してくれないから、必死についていくしかない。
「し、静……?急にどうしたの?」
引かれたまま、私は思わず後ろを振り返ると、深澤くんが、自分の席に座ったままこちらを見ている。
そして――ひらひら、と手を振っていた。
「……っ」
それに気づいて、私も反射的に手を振り返そうとしたけれど、その前に静に手を掴まれてしまったせいで、結局振り返すことができないまま教室を後にする。
廊下へ出ても、静の足は止まらない。
「鳳条くん!」
「ねえ、鳳条くん、一緒に帰らない?」
「鳳条くーん!」
廊下にいたクラスメイトたちが次々と静を呼び止める。



