顔を上げて静を見る。
すると、そこにあった瞳は、さっきまで向けていたものとは少し違っていた。
鋭くて、まるで獲物を捕らえるような瞳ではない。
私が知っている、穏やかな瞳。
昔、私が泣いているときに黙って隣に座ってくれたときと同じような、静かな目だった。
……よかった。どうやら、まだ何か不機嫌なわけではないらしい。
……本当によかった。
帰り道、静が不機嫌だと困るのだ。
初日の電車みたいなことをされたらたまったものじゃない。
というか、あのときだって本当に怖かったし。
隣を歩いているだけでも、あの長身と無表情のせいで十分迫力があるのに、そこへ不機嫌そうなオーラまで加わったら、私の精神が持たない。
「うん、帰ろっか」
そう言ってスクールバッグを持ち直した、そのときだった。
「鳳条さん」
隣から声がして、振り向く。
「また明日ね、鳳条さん」
深澤くんが椅子に座ったまま、頬杖をついて私を見上げていた。
「……え」
一瞬、意味を理解するのが遅れた。
今……私に言った?



