そう思って、もう一度深澤くんへ視線を戻そうとした、その瞬間だった。
「……っ」
深澤くんの後ろ。
その向こうに――静がいる。こちらを見ている。いや……見ているというより。
……睨んでる?
静の目は、明らかに笑っていなかった。さっきまで女の子たちに向けていた、あの張り付いたような愛想笑いも消えている。
その視線が妙に怖くて、私は思わず背筋を伸ばす。
……な、なんで?
別に何もしてないよね、私。深澤くんと話していただけだよね?
教科書を見せていただけ。なのに、どうしてあんな顔をしているの?
「鳳条さん、どうかした?」
深澤くんの声で、私はハッと我に返った。
「う、ううん!何も!」
慌てて首を横に振る。そして、静からバッと目を逸らした。
見ていない。私は何も見ていない。気づいていないふりをしよう。
だって――静が何を思っているのかなんて、私には分からないんだから。
そう自分に言い聞かせながら、私は机の上の教科書へ視線を落とした。



