こういうの。こういうのだよ。私が求めてたもの!
誰かと普通に話すこと。くだらないことで笑うこと。教科書を見せてって言われて、「いいよ」って答えること。
そんな、当たり前の高校生活。ずっと欲しかった。
ずっと憧れていた。たったそれだけのことなのに、なんだかすごく嬉しい。
胸の奥がじんわりして、自然と頬が緩んでしまう。
「鳳条さんってさ」
「ん?」
思わず顔を上げると、深澤くんは笑ったまま続けた。
「よく笑うよね」
「……え?」
そんなことを言われるとは思っていなくて、私は目を瞬いた。
「いや、最初ちょっと大人しい子なのかなって思ってたんだけどさ。話してみたら普通に話してくれるし」
「……そう、かな」
誰かにそんなふうに言ってもらったのは、いつ以来だろう。学校ではいつも「ヤクザの娘」という目で見られてきた。
近づいてくる子も、私の家のことを知れば離れていった。
だから私は、いつの間にか「どうせ仲良くなれない」と最初から諦めるようになっていた。
でも――この人は、何も知らない。
私がどんな家の人間なのかも。私の祖父が誰なのかも。
静が私のボディーガードだということも。ただのクラスメイトとして、私に話しかけてくれている。それが、嬉しかった。



