「え、と……どうしたの?」
すると深澤くんは、少し困ったように笑った。
「俺、次の授業の教科書忘れてさ。見せてくんない?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。だけど、すぐに意味を理解して、胸の奥がほんの少しだけ温かくなる。
「……教科書?」
私が聞き返すと、深澤くんは、うんと頷いた。
「数学。家に置いてきちゃった」
そう言って、申し訳なさそうに笑う。
「……ふふっ」
思わず笑ってしまった。なんだ、そんなことか。
「いいよ」
私は机の中から教科書を取り出して、机の真ん中に置いた。
「ありがと!まじで助かったー。忘れて焦ってたんだよね」
その笑顔につられて、私も笑う。



