クラス替えから数日。
なんとなく話す子はできたけど、まだみんな少し距離を探っている感じがする。
私は机に頬杖をつきながら、スマホに映ったアイドルの写真を見せた。
「ほんと今回の衣装かっこよくない?」
「え、待って、それ私も思った!」
椅子を半分後ろに向けたまま、その投稿にハートをつける。
今流行りの、韓国アイドルグループ。
最近つるんでる3人が好きって言うから、私も見るようになった。
窓の外では、グラウンドから体育の笛の音が聞こえる。
誰かが机を引く音。
前の席の子たちの笑い声。
教室はうるさいのに、昼休み前ってどうしてこんなに眠たくなるんだろう。
「ていうかさ、今回のアルバムやばくない?」
「あ、待って、まだ全部聴けてない!」
「え、絶対聴いたほうがいいって!」
スマホを向けられて、私は画面のジャケット写真を見る。
「あー、これ好きかも」
「ほら!やっぱ風花好きそう!」
そんな他愛ない会話をしていた時だった。
「おい」
突然、後ろから軽く肩を叩かれる。
振り返ると、知らない男子が立っていた。
——いや、知らないわけじゃない。
「これ落ちてた」
差し出されたのは、一枚のプリント。
三浦 風花
確かに私の名前が書かれてる。
「あ、ありがとう」
反射みたいに受け取ってから、私は少しだけ目を瞬かせる。
早瀬 朔
去年まで隣のクラスだった男の子。
話したことはない。
でも、名前くらいは知っていた。
いつも友達に囲まれていて、先生にも平気でタメ口を使って、放課後もよく遊び歩いているらしい。
——チャラい。
そんな噂を、何度聞いたか分からない。
うわ、同じクラスだったんだ。
少しだけ嫌な気持ちになったけど、もちろん顔には出さない。
「風花? どうしたの?」
「あ、ううん。で、なんの話だっけ?」
私はすぐに友達のほうへ向き直った。

