花より甘く、抹茶より苦く

## 第7話 「依存」

最近。

私はおかしい。

朝起きて、
最初に見るのはスマホ。

まちからのメッセージが来ているか、
確認してしまう。

来ていないと不安になる。

既読が遅いだけで、
胸がざわざわする。

……前までは、
こんなじゃなかったのに。

『おはよ、らてちゃん』

たったそれだけで、
安心してしまう。

重症だ。

◇ ◇ ◇

昼休み。

私は教室で友達に囲まれていた。

「らてちゃん聞いて〜!」
「昨日マジで最悪だった!」

いつも通り。

笑って、
相槌を打って、
ちゃんと話を聞く。

でも。

ちら。

気づけば、
廊下を見ていた。

「……らてちゃん?」

「あ、ごめん!」

いない。

まちが。

今日は昼休みに来てない。

それだけなのに。

落ち着かない。

胸の奥が、
変に冷たい。

すると。

ガラッ。

教室のドアが開いた。

「らてちゃん」

その声を聞いた瞬間。

心臓が跳ねた。

「あ……」

立っていたのは、
まち。

その瞬間。

自分でもわかるくらい、
顔が明るくなった。

まちはそれを見て、
少し目を細める。

「……何その顔」

「え?」

「俺来ただけで嬉しそう」

どきっ。

図星すぎる。

「そ、そんなこと」

「ある」

まちは私の隣に来ると、
そっと私の指を触った。

机の下。

誰にも見えない場所で。

「待ってた?」

小さな声。

私は否定しようとして、
できなかった。

だって。

本当に待ってたから。

「……少しだけ」

答えると。

まちは一瞬、
息を止めた。

「……やば」

「?」

「うれしい」

その笑顔を見て、
また胸が苦しくなる。

私はもう、
完全にまちに振り回されていた。

◇ ◇ ◇

放課後。

今日はまちが店番らしく、
会えない日だった。

それなのに。

私は気づけば、
雲茶の前に立っていた。

「……何してるんだろ、私」

自分で自分が分からない。

会えないだけで、
苦しいなんて。

すると。

カラン。

店の扉が開いた。

「……らてちゃん?」

まちだった。

エプロン姿。

抹茶色のリボン。

その姿を見た瞬間。

安心してしまった。

「あ……」

まちは数秒黙ったあと、
急いで外に出てくる。

「どうしたの!?」

「えっと……」

言えない。

“会いたくなったから来た”
なんて。

恥ずかしすぎる。

すると。

まちは私の顔をじっと見たあと、
小さく笑った。

「……会いたかった?」

「っ」

図星。

「……わかりやす」

「うるさい……」

顔が熱い。

でも。

まちはすごく嬉しそうだった。

「らてちゃん」

「なに……」

「もう俺なし無理?」

その言葉に、
胸がどくんと鳴る。

否定しなきゃいけないのに。

「……まち、は?」

「え?」

「まちは、
私なし無理?」

聞くと、
まちは迷いなく答えた。

「無理」

即答。

その答えが、
どうしようもなく嬉しい。

おかしい。

こんなの、
健全じゃない。

なのに。

「……私も」

気づけば、
そう呟いていた。

その瞬間。

まちの目が、
幸せそうに細められた。

まるで。

世界で一番欲しかったものを、
手に入れたみたいに。