花より甘く、抹茶より苦く

## 第3話 「独占欲」

「まち、離して……!」

そう言っても、
まちは私の腕を掴んだままだった。

教室の空気がざわつく。

みんな、
見てる。

なのにまちは、
まるで周りなんて見えていないみたいに、
私だけを見つめていた。

「……やだ」

「え?」

「離したくない」

その声は、
拗ねた子どもみたいに甘い。

でも。

掴まれた手は痛いくらい強くて、
胸がざわつく。

「まち」

「だってらてちゃん、
誰にでも笑うじゃん」

「……っ」

「優しいし、
かわいいし、
すぐ距離近いし」

責めるような声じゃない。

むしろ、
泣きそうだった。

「俺だけじゃないの、
やだ」

その瞬間。

胸がぎゅっと締め付けられる。

こんなふうに、
誰かに必要とされたことなんてなかった。

みんな、
“学園の華”の私を見る。

かわいい、
優しい、
憧れる。

でも。

まちは違う。

ちゃんと、
“私”を見てくれている気がした。

「……まち」

すると。

ガラッ。

教室のドアが開く。

「おーい雲茶、先生呼んでるぞ」

男子の声に、
まちはゆっくり私から離れた。

その瞬間、
教室に空気が戻る。

私はやっと息を吐いた。

まちは少しだけ不満そうに眉を下げる。

「……あとでね、らてちゃん」

そう言って、
またいつもの笑顔を浮かべた。

まるでさっきの空気が、
嘘みたいに。

でも。

私は知ってしまった。

あの笑顔の奥にある、
重すぎる感情を。

◇ ◇ ◇

放課後。

カフェ花園は今日も混んでいた。

「らてちゃんお願いー!」
「写真撮ってもいい?」

「はい、もちろんです!」

笑顔で接客しながら、
ふと窓の外を見る。

すると。

道路の向こう。

雲茶の前に、
まちが立っていた。

……こっち見てる。

目が合った瞬間、
まちはふわっと笑った。

それだけなのに。

心臓が変に跳ねる。

「らてー、ボーッとしてるぞ」

「あっ、ごめんなさい!」

お父さんに注意され、
慌てて仕事に戻る。

でも。

その後も何度も、
私は窓の外を見てしまった。

閉店後。

外に出ると、
夜風が頬を撫でる。

「お疲れ、らてちゃん」

「っ!?」

びっくりして振り返る。

そこには、
自販機の横に座っているまち。

「なんでいるの!?」

「待ってた」

当然みたいに言う。

「……帰ってなかったの?」

「うん」

「なんで……」

すると、
まちは立ち上がって私に近づいた。

夜のせいか、
昼より距離が近く感じる。

「今日さ」

「?」

「らてちゃん、
あの男と笑ってた」

……藤崎くんのことだ。

「クラスメイトだよ?」

「知ってる」

まちは笑う。

でも。

「でもやだ」

その笑顔が、
少し壊れそうだった。

「……らてちゃんが、
他の奴見てるの」

胸がざわつく。

怖い。

はずなのに。

「俺だけ見てよ」

その言葉に、
どうしようもなく心が揺れた。