## 第2話 「犬系男子」
翌日。
「らてちゃーん!」
教室のドアから、
聞き慣れた声が響いた。
クラス中の女子がざわつく。
「え、雲茶くん?」
「また来てる」
「らてちゃんに会いに?」
私は思わず机に突っ伏した。
……なんで。
なんで敵クラスの人が、
毎朝ここに来るの!?
「らてちゃん、おはよ」
にこーっと笑いながら、
まちは私の机に肘をつく。
大型犬。
ほんとに大型犬。
「……おはよ」
「テンション低くない?」
「誰のせいだと思ってるの」
「俺?」
「あなたです」
クラスの女子たちが、
きゃーきゃー騒いでる。
というか、
視線が痛い。
“学園の華”なんて勝手に呼ばれてる私は、
普段から目立つ。
そこに最近人気の雲茶まちまで絡んできて、
さらに注目されてしまっていた。
「ね、今日放課後ヒマ?」
「ヒマじゃないです。店あるし」
「じゃあ店行く」
「来なくていいです」
「なんでぇ」
まちは不満そうに頬を膨らませる。
……かわいい。
いや、
騙されちゃダメ。
この人は敵店の息子。
しかも昨日、
なんか妙に怖かった。
すると突然。
ぽすっ。
「!?」
頭に重みが乗った。
見ると、
まちが私の頭に顎を乗せていた。
「ちょっ!?」
「疲れた」
「ここ教室!!」
「らてちゃんいい匂いする」
「〜〜〜っ!!」
一気に顔が熱くなる。
クラス中、
大騒ぎ。
「近い近い近い!!」
「えー」
まちは全然離れない。
むしろ、
私の髪を指でくるくるし始める。
「……さらさら」
「やめてください!!」
「怒った顔もかわいい」
この人、
ほんと調子狂う。
でも。
こんなふうに、
真っ直ぐ好意を向けられたことなんてなくて。
胸の奥が、
少しだけ落ち着かなくなる。
するとその時。
「らて、一緒に移動教室行こ」
同じクラスの男子、
藤崎くんが声をかけてきた。
その瞬間だった。
ぴたり。
まちの笑顔が止まる。
「……誰?」
空気が変わった。
教室が一瞬静かになる。
藤崎くんも困った顔をした。
「え、同じクラスだけど……」
「ふーん」
まちは笑う。
笑ってる。
なのに。
目だけが、
全然笑っていなかった。
ぞくり。
昨日感じた寒気が、
また背中を這う。
「らてちゃん」
「っ、なに……?」
「その人と仲良いの?」
声は優しい。
なのに、
逃げたくなるくらい怖い。
「ふ、普通だよ?」
「普通って、
毎日話す?」
「クラスメイトだもん……」
すると、
まちは数秒黙ったあと。
突然。
私の腕を引いた。
「えっ」
ぐいっ。
そのまま、
自分の方へ引き寄せる。
「ま、まち!?」
「……やだな」
ぽつりと落ちた声は、
今までで一番小さかった。
「らてちゃん、
誰かに取られるの」
心臓が跳ねる。
近い。
近すぎる。
まちの匂い。
熱。
視線。
全部が近くて、
息ができない。
なのに。
嫌じゃない自分が、
少しだけ怖かった。
翌日。
「らてちゃーん!」
教室のドアから、
聞き慣れた声が響いた。
クラス中の女子がざわつく。
「え、雲茶くん?」
「また来てる」
「らてちゃんに会いに?」
私は思わず机に突っ伏した。
……なんで。
なんで敵クラスの人が、
毎朝ここに来るの!?
「らてちゃん、おはよ」
にこーっと笑いながら、
まちは私の机に肘をつく。
大型犬。
ほんとに大型犬。
「……おはよ」
「テンション低くない?」
「誰のせいだと思ってるの」
「俺?」
「あなたです」
クラスの女子たちが、
きゃーきゃー騒いでる。
というか、
視線が痛い。
“学園の華”なんて勝手に呼ばれてる私は、
普段から目立つ。
そこに最近人気の雲茶まちまで絡んできて、
さらに注目されてしまっていた。
「ね、今日放課後ヒマ?」
「ヒマじゃないです。店あるし」
「じゃあ店行く」
「来なくていいです」
「なんでぇ」
まちは不満そうに頬を膨らませる。
……かわいい。
いや、
騙されちゃダメ。
この人は敵店の息子。
しかも昨日、
なんか妙に怖かった。
すると突然。
ぽすっ。
「!?」
頭に重みが乗った。
見ると、
まちが私の頭に顎を乗せていた。
「ちょっ!?」
「疲れた」
「ここ教室!!」
「らてちゃんいい匂いする」
「〜〜〜っ!!」
一気に顔が熱くなる。
クラス中、
大騒ぎ。
「近い近い近い!!」
「えー」
まちは全然離れない。
むしろ、
私の髪を指でくるくるし始める。
「……さらさら」
「やめてください!!」
「怒った顔もかわいい」
この人、
ほんと調子狂う。
でも。
こんなふうに、
真っ直ぐ好意を向けられたことなんてなくて。
胸の奥が、
少しだけ落ち着かなくなる。
するとその時。
「らて、一緒に移動教室行こ」
同じクラスの男子、
藤崎くんが声をかけてきた。
その瞬間だった。
ぴたり。
まちの笑顔が止まる。
「……誰?」
空気が変わった。
教室が一瞬静かになる。
藤崎くんも困った顔をした。
「え、同じクラスだけど……」
「ふーん」
まちは笑う。
笑ってる。
なのに。
目だけが、
全然笑っていなかった。
ぞくり。
昨日感じた寒気が、
また背中を這う。
「らてちゃん」
「っ、なに……?」
「その人と仲良いの?」
声は優しい。
なのに、
逃げたくなるくらい怖い。
「ふ、普通だよ?」
「普通って、
毎日話す?」
「クラスメイトだもん……」
すると、
まちは数秒黙ったあと。
突然。
私の腕を引いた。
「えっ」
ぐいっ。
そのまま、
自分の方へ引き寄せる。
「ま、まち!?」
「……やだな」
ぽつりと落ちた声は、
今までで一番小さかった。
「らてちゃん、
誰かに取られるの」
心臓が跳ねる。
近い。
近すぎる。
まちの匂い。
熱。
視線。
全部が近くて、
息ができない。
なのに。
嫌じゃない自分が、
少しだけ怖かった。
