花より甘く、抹茶より苦く

## 第12話 「引き離される」

「ふざけるな!!」

お父さんの怒鳴り声で、
店内の空気が震えた。

お客さんたちも、
完全に静まり返っている。

「うちの娘に近づくな」

鋭い視線が、
まちを射抜く。

でも。

まちは一歩も引かなかった。

「無理です」

即答。

「俺、
らて好きなんで」

その瞬間。

周囲がざわついた。

「えっ」
「マジ!?」
「付き合ってんの?」

私は顔から血の気が引く。

バレた。

終わった。

すると。

「らて」

お父さんが私を見る。

今まで見たことないくらい、
怒った顔。

「本当なのか」

喉が詰まる。

でも。

隣で繋がれたまちの手が、
少し震えていた。

怖いんだ。

まちも。

なのに、
私を離さない。

その熱が伝わってきて。

「……ほんと」

気づけば、
私は頷いていた。

その瞬間。

お父さんの顔色が変わる。

「っ……!」

怒り。

失望。

全部混ざった目。

「今すぐ別れろ」

店内が静まり返る。

「お父さん……」

「相手は雲茶だぞ!?」

強い声。

「昔から、
あの家がどれだけ——」

「関係ない!」

気づけば、
私は叫んでいた。

自分でも驚く。

だって今まで、
お父さんにこんな言い方したことなかった。

でも。

「まちは関係ない!」

その言葉を聞いた瞬間。

まちが私を見る。

少しだけ、
苦しそうな顔。

「……らて」

お父さんは完全に怒っていた。

「そんなにあいつが大事か」

「……大事だよ」

即答だった。

迷いなんて、
もうなかった。

すると。

お父さんは深く息を吐いて、
冷たく言った。

「もう雲茶には行くな」

「っ」

「連絡も禁止だ」

世界が止まった気がした。

「……やだ」

小さく呟く。

無理。

そんなの。

会えないなんて。

「やだ……!」

自分でも驚くくらい、
声が震えた。

すると。

隣で。

まちが私の手を強く握る。

「らて」

低い声。

「泣かないで」

そう言うまち自身も、
今にも壊れそうな顔をしていた。

「……大丈夫」

全然大丈夫じゃないのに、
無理やり笑う。

「絶対離れないから」

その言葉が、
苦しいくらい嬉しい。

でも次の瞬間。

「離せ」

お父さんが、
私たちの手を無理やり引き離した。

「っ……!」

まちの指先が離れる。

その瞬間。

胸が、
裂けそうに痛んだ。

「……らて」

まちが私を呼ぶ。

私は思わず、
まちの方へ手を伸ばした。

でも。

届かない。

そのまま私は、
お父さんに腕を掴まれ、
店の奥へ連れて行かれた。

後ろで。

まちが今まで聞いたことないくらい低い声で、
ぽつりと呟く。

「……返して」

ぞくりとした。