花より甘く、抹茶より苦く

## 第10話 「嫉妬」

「うれしすぎて、
ほんとに壊れそう」

まちは私を抱き締めたまま、
しばらく離してくれなかった。

鼓動が近い。

熱が伝わる。

最近、
この腕の中が一番落ち着く。

……もうだめだ。

完全に依存してる。

◇ ◇ ◇

翌日。

学校に着くと、
やたら視線を感じた。

「ねぇ見た?」
「雲茶くん今日やばくない?」

女子たちがざわついている。

私は首を傾げながら、
教室へ向かった。

すると。

「……っ」

窓際の席で、
まちが女子に囲まれていた。

「雲茶くんこれあげるー!」
「今日もかわいい!」

まちは愛想よく笑っている。

いつもの犬系笑顔。

……なのに。

胸がざわついた。

嫌だ。

なんか、
嫌。

するとその時。

女子の1人が、
まちの腕に軽く触れた。

瞬間。

どくっ。

胸の奥が黒くなる。

「……らて?」

友達に呼ばれて、
私はハッとした。

「顔怖いけど大丈夫?」

「え」

そんな顔してた?

私は慌てて視線を逸らす。

おかしい。

前なら、
こんなことでモヤモヤしなかった。

なのに。

今は。

“触らないで”

って思ってしまった。

◇ ◇ ◇

昼休み。

屋上。

いつもの秘密の場所。

「らてー」

まちが後ろから抱きついてくる。

「っ、びっくりした……」

「会いたかった」

肩に顔を埋めながら、
甘える声。

……かわいい。

でも。

私は少し黙ったまま、
まちの腕を触った。

「?」

「……今日、
女子と仲良かったね」

言った瞬間、
自分で驚いた。

こんなこと言うなんて。

すると。

まちは数秒固まったあと。

「……え」

めちゃくちゃ嬉しそうな顔をした。

「らて、
嫉妬してる?」

「っ」

図星。

顔が熱くなる。

「してない!」

「してるじゃん」

まちは私の正面に回る。

その目が、
どんどん細くなる。

嬉しくてたまらないみたいに。

「……そっか」

「まち」

「らても、
俺と同じになったんだ」

ぞくり。

嬉しそうなのに、
どこか危ない笑顔。

「やばい」

まちは私の頬に触れる。

「かわいすぎる」

「っ……」

「ねぇ、
もっと嫉妬して」

「は!?」

「らてが俺だけ見てくれるなら、
俺なんでもする」

その声が、
甘すぎて苦しい。

すると。

「雲茶くーん!」

屋上のドアの向こうから、
女子の声がした。

瞬間。

まちの顔から笑顔が消える。

空気が変わる。

私はその変化を、
もう知っていた。

「……行かないで」

低い声。

まちは私を抱き締める。

「今、
らてといる」

子どもみたいに、
私の肩へ顔を押しつける。

でも。

それを見た瞬間。

なぜか少し安心してしまった。

“私だけ特別”

そう思えてしまったから。

もう、
戻れないくらいに。