## 第9話 「名前」
「……最近、
雲茶の息子と仲良いのか?」
お父さんの声に、
心臓が凍りついた。
「え……」
頭が真っ白になる。
なんで。
なんで急に——。
「学校でよく一緒にいるって聞いた」
鋭い目。
完全に疑ってる。
「べ、別に……普通の友達だよ」
声が少し裏返った。
やばい。
絶対怪しい。
お父さんはじっと私を見たあと、
深くため息をついた。
「らて」
低い声。
「雲茶とは関わるな」
「……っ」
「昔から、
あの店とは色々あったんだ」
私は唇を噛む。
まちの顔が浮かぶ。
優しい笑顔。
甘える声。
苦しそうな目。
“絶対離さないから”
胸がぎゅっと締め付けられた。
「……どうしてそんなに嫌うの?」
思わず聞くと、
お父さんは眉をひそめた。
「お前には関係ない」
「でも——」
「らて」
ぴしゃりと言われ、
私は黙る。
そのままお父さんは、
奥へ消えていった。
残された私は、
震える指でスマホを握る。
無意識に、
まちとのトーク画面を開いていた。
『会いたい』
送ろうとして、
止まる。
重いかな。
迷惑かな。
でも。
会わないと苦しい。
すると。
ぶるっ。
タイミングよく通知が来た。
『今日会える?』
まちだった。
それだけで、
涙が出そうなくらい安心する。
もう本当に、
おかしくなってる。
◇ ◇ ◇
閉店後。
私はこっそり店を抜け出した。
向かった先は、
雲茶の裏口。
すると。
「らて」
その呼び方に、
私は足を止めた。
「……え?」
まちは少し照れたように笑う。
「名前で呼びたくなった」
どくん。
心臓が跳ねる。
今までずっと、
“らてちゃん”だったのに。
急に。
ただの“らて”。
それだけなのに、
恋人なんだって実感してしまう。
「……まち」
「ん」
「急にどうしたの」
すると、
まちは少し黙ったあと、
私を抱き寄せた。
「今日、
ずっと不安だった」
耳元で落ちる声。
「らて取られそうで」
「取られないよ」
私はすぐ答える。
だって本当に、
もうまち以外なんて考えられないから。
すると。
まちは私の肩に顔を埋めたまま、
小さく笑った。
「……最近、
らてのそういうとこずるい」
「え?」
「前より俺のこと好きになってる」
図星だった。
何も言えなくなる。
まちはゆっくり顔を上げる。
その目は、
幸せそうなのに、
どこか壊れそうで。
「ねぇ、らて」
「……なに?」
「もう、
俺なしで生きていけない?」
優しく聞いてるのに、
逃がしてくれない目。
私は少しだけ俯いた。
否定したい。
でも。
会えないだけで苦しくて、
返信が遅いだけで不安で、
抱き締められると安心する。
そんな自分を、
もう知ってる。
だから。
「……うん」
小さく頷くと。
まちは息を呑んだ。
次の瞬間。
ぎゅうっと、
今までで一番強く抱き締められる。
「……やばい」
震える声。
「うれしすぎて、
ほんとに壊れそう」
「……最近、
雲茶の息子と仲良いのか?」
お父さんの声に、
心臓が凍りついた。
「え……」
頭が真っ白になる。
なんで。
なんで急に——。
「学校でよく一緒にいるって聞いた」
鋭い目。
完全に疑ってる。
「べ、別に……普通の友達だよ」
声が少し裏返った。
やばい。
絶対怪しい。
お父さんはじっと私を見たあと、
深くため息をついた。
「らて」
低い声。
「雲茶とは関わるな」
「……っ」
「昔から、
あの店とは色々あったんだ」
私は唇を噛む。
まちの顔が浮かぶ。
優しい笑顔。
甘える声。
苦しそうな目。
“絶対離さないから”
胸がぎゅっと締め付けられた。
「……どうしてそんなに嫌うの?」
思わず聞くと、
お父さんは眉をひそめた。
「お前には関係ない」
「でも——」
「らて」
ぴしゃりと言われ、
私は黙る。
そのままお父さんは、
奥へ消えていった。
残された私は、
震える指でスマホを握る。
無意識に、
まちとのトーク画面を開いていた。
『会いたい』
送ろうとして、
止まる。
重いかな。
迷惑かな。
でも。
会わないと苦しい。
すると。
ぶるっ。
タイミングよく通知が来た。
『今日会える?』
まちだった。
それだけで、
涙が出そうなくらい安心する。
もう本当に、
おかしくなってる。
◇ ◇ ◇
閉店後。
私はこっそり店を抜け出した。
向かった先は、
雲茶の裏口。
すると。
「らて」
その呼び方に、
私は足を止めた。
「……え?」
まちは少し照れたように笑う。
「名前で呼びたくなった」
どくん。
心臓が跳ねる。
今までずっと、
“らてちゃん”だったのに。
急に。
ただの“らて”。
それだけなのに、
恋人なんだって実感してしまう。
「……まち」
「ん」
「急にどうしたの」
すると、
まちは少し黙ったあと、
私を抱き寄せた。
「今日、
ずっと不安だった」
耳元で落ちる声。
「らて取られそうで」
「取られないよ」
私はすぐ答える。
だって本当に、
もうまち以外なんて考えられないから。
すると。
まちは私の肩に顔を埋めたまま、
小さく笑った。
「……最近、
らてのそういうとこずるい」
「え?」
「前より俺のこと好きになってる」
図星だった。
何も言えなくなる。
まちはゆっくり顔を上げる。
その目は、
幸せそうなのに、
どこか壊れそうで。
「ねぇ、らて」
「……なに?」
「もう、
俺なしで生きていけない?」
優しく聞いてるのに、
逃がしてくれない目。
私は少しだけ俯いた。
否定したい。
でも。
会えないだけで苦しくて、
返信が遅いだけで不安で、
抱き締められると安心する。
そんな自分を、
もう知ってる。
だから。
「……うん」
小さく頷くと。
まちは息を呑んだ。
次の瞬間。
ぎゅうっと、
今までで一番強く抱き締められる。
「……やばい」
震える声。
「うれしすぎて、
ほんとに壊れそう」
