花より甘く、抹茶より苦く

## 第8話 「バレてはいけない恋」

「……私も」

その言葉を聞いた瞬間。

まちは私を抱き寄せた。

ぎゅうっと、
苦しいくらい強く。

「うれしい……」

耳元で震える声。

「やっと、
らてちゃんも俺と同じになった」

どくん。

その言葉に、
胸が妙に熱くなる。

まちはずっと、
私に溺れていた。

でも今は。

私も同じ。

まちがいないだけで不安で、
会えないだけで苦しい。

完全に、
お互いしか見えなくなっていた。

◇ ◇ ◇

その日から。

私たちはもっと秘密裏に会うようになった。

放課後、
人目を避ける。

学校では距離を置く。

店の近くでは話さない。

バレたら終わりだから。

でも。

好きになればなるほど、
隠すのが苦しくなる。

「らてちゃん」

閉店後の雲茶。

薄暗い店内で、
まちはカウンター越しに私の手を握った。

「今日、
全然話せなかった」

「学校で?」

「うん」

拗ねた声。

かわいい。

でも。

「仕方ないでしょ、
バレたら大変なんだから」

そう言うと、
まちは黙り込む。

そして。

「……いっそバレてもいいのに」

ぽつり。

私は目を見開いた。

「え?」

「隠したくない」

まちは私の手を引き、
カウンターの中へ入れる。

狭い空間。

逃げ場がない。

「俺、
らてちゃんが恋人って、
みんなに言いたい」

その声は、
寂しそうだった。

「……まち」

「だってさ」

まちは私の肩に顔を埋める。

「他の奴ら、
まだらてちゃん狙ってる」

低い声。

少し怖い。

「今日も男子が話しかけてた」

「クラスメイトだってば」

「やだ」

ぎゅっと抱き締められる。

最近、
抱き締められないと落ち着かなくなってる自分がいる。

それが怖い。

でも安心する。

「……まち、
苦しい」

「ごめん」

そう言いながら、
また離れない。

「でも離したくない」

耳元で落とされる声。

熱い。

甘い。

危険なくらい。

「らてちゃん」

「ん……?」

「もし親に反対されても、
俺、絶対離さないから」

その瞬間。

胸がざわついた。

今まで、
考えないようにしてた。

私たちの親は、
仲が悪い。

もしバレたら。

絶対、
許されない。

「……大丈夫だよ」

私は無理やり笑った。

「まだバレてないし」

そう。

まだ。

そのはずだった。

◇ ◇ ◇

翌日。

カフェ花園。

放課後の店内で、
私は接客をしていた。

すると。

「らて」

お父さんの低い声。

振り向くと、
険しい顔をしている。

「……最近、
雲茶の息子と仲良いのか?」

心臓が止まりそうになった。