現実離れした美しさに、芸能人か、あるいは一枚の絵画みたいだと思った。
──それなのに。
「そういうところって何。……俺の何処に期待してたの」
唇から零れ落ちた声はひどく穏やかで、その発言は、彼の造形美をすべて台無しにするほど最悪。
うわあ……辛辣……。
天敵を前にした小動物のように身動きひとつとれず、アイスカフェラテを静かにすする。
「……最低!」
バシャン!
次の瞬間、女性はグラスに入っていた水を男へぶちまけると席を立った。遠ざかるヒールの音が、彼女の怒りを物語っている。ドラマでしか見ないような展開に、思わず私は釘付けだ。
この場で私よりも不幸な人がいた……。
あまりの悲惨さに目を離せないでいると、最悪なことに、男と目が合った。
滴る水滴を頬や前髪に貼り着けたまま、その人は、柔らかく微笑んだ。ともすれば世界に何の執着もないような、ひどく綺麗な笑顔だった。こんな惨憺たる状況なのに、不謹慎にも見惚れてしまうくらいに。



