「心綸、そろそろ彼氏作った方が安全かも」
凪智のアドバイスに「彼氏かあ…」と、重たいため息を吐き出す。
「もうどのくらいいないっけ、半年?」
「元彼が就活中に、修士課程の相談をしたら" お気楽で羨ましい "って言われて別れたのが最後です」
価値観が違うと言われた。私という存在を、全力で否定された気分だった。
食べるもの、見るもの、触れるもの、家族であっても、全く同じだという人間は居ないだろう。
だからこそ、男女の交際は価値観を擦り合わせていくものだと思っていた私にとって、その言葉は私の考えを全否定されたに等しかった。
「ああ、あいつか……。心綸が捕まえる男、漏れなく見た目優男な中身クズ男くんだもんね」
「うん。最初は優しいんだけどなあ……」
言いながら、ふと。
いつかのカフェで会ったあのお兄さんが脳裏によぎったのは、おそらく彼が別れ際に私に「またね」の魔法を掛けたからだろう。



