雨暮くんは溺愛彼氏

「合唱部? なら、俺も見に行こうかな。」
「えっ? 雨暮くん、部活入る時間なんてあるの? 」このひとは若き実業家として名を馳せているというのに。驚いた。
 四月の下旬はまだ仮入部の段階で、いろんな部活を自由に見学出来る。
 また来るねと言って、放課後、うちの長いホームルームをきちんと待ってくれていた雨暮くん。うう。ハセセンの話の長さが今回は恨めしい。……面白い話もたくさんしてくれるから楽しいんだけれど。いいんだけれど。
 そしてわたしがこれから演劇部を見に行くと言ったら一緒に行くと言ったのだ。――わたしの彼氏が。
 わたしの彼氏……。
 神様仏様、こんな素敵で格好いいひとが彼氏だなんて! 
 いつも物憂げで憂い気な眼差しでどこか遠くを見ているような、所在のなさでさえも、昭和の文豪が現代にタイムスリップしたみたいで。浮世離れしているのに、言っていることは至極まっとうで真面目で。
 暑さゆえに、学ランの前を開いた姿が爽やかで。はだけた胸元に目が行くとどきん! として目を逸らしてしまった。