「透羽ちゃん、早くー!」
伊織が砂浜の向こうで手を振る。
白いTシャツに半ズボン。
すでに足元は砂だらけ。
「待ってってば!」
私はサンダルを脱ぎながら、小走りで追いかけた。
今日は、黒月のみんなと海に来ていた。
理由は単純。
伊織が「夏だし海行きたい!」って騒いだから。
斑が「焼きそばある?」って乗っかって、
迅が「人混みは嫌ですが、まあ付き合いましょう」とため息をついて、
叶兎が「……海」とだけ言って、
航斗が「うるせぇ、行くならさっさと決めろ」と言った結果。
今、私は海にいる。
こういう「普通の夏」を過ごす日が来るなんて、少し前の私は想像してなかった。

