ミミのサバイバル日記~生き抜くために日記を使う 敵はママ!

 リコちゃんに、
「公園で遊ぼう」
と誘われた。

 私は、
 思い切ってママに聞いてみた。

「ママ……今日、公園で遊んでもいい?」

 すると。

「そうね」

 ママは、
 野菜を刻みながら言った。

「同年代の女子との付き合い方を学ぶのも必要かもしれないわね」

 ……え。

 いいの?

 一瞬、
 胸がぱっと明るくなる。

 でも。

「ただし」

 出た。

 《ただし》。

「帰ったらピアノ一時間」

「勉強三時間」

「それから食器洗いと、トイレ掃除もするのよ」

 ……増えた。

 仕事、
 増えてる。

「家事ができる女性は、
 将来絶対に役に立つの」

「17時までには帰ってくること」

「いいわね?」

 そして。

 いつもの、
 ママの口癖。

「ミミが将来困らないように、
 何でもできる女性に《《育ててあげて》》いるのよ」

 その言葉を聞くたび、
 息が苦しくなる。

 でも。

 断ったら、
 もっと面倒。

「はーーい」

 私は笑った。

「わかりました」

 ――サバイバル成功。

 遊び時間、
 獲得。

 公園に着くと、
 リコちゃんとシオンちゃんがいた。

 しかも。

 ふたりとも、
 ゲーム機を持っている。

 え。

 外でゲーム?

 すご。

 リコちゃんが、
 小声でシオンちゃんに言った。

「シオンちゃん、あのね」

 ちらっと私を見る。

「ミミちゃん、ゲーム持ってないの」

「だから……やめよ?」

 胸が、
 ちくっとした。

 気をつかわせちゃった。

 すると。

「え?」

 シオンちゃんが、
 ぱっと笑った。

「じゃあ、うち来る?」

「うちでゲームやろ!」

 ……え。

 友達の家?

 行っていいの?

 その一言で、
 流れは決まった。

 ――シオンちゃんの家へ。

 そして。

 私は、
 衝撃を受けた。

 ……うわあ。

 友だちの家って、
 こんななんだ。

 必死で、
 顔に出さないようにする。

 玄関。

 靴がいっぱい。

 脱ぎっぱなし。

(うちは一人一足しか置いちゃダメなのに)

 しかも。

 誰も怒られてない。

 部屋へ入る。

 そして――。

 さらに驚いた。

 マンガ本。

 いっぱい。

 床に置いてある。

 脱ぎっぱなしの服。

 大きなテレビ。

 ゲームソフト。

 お菓子。

 ジュース。

(ママなら絶対怒る……!)

 なのに。

 誰も怒られない。

 自由。

 なんか――。

 すごい。

 いいなあ。

 ただ、
 ただ。

 うらやましかった。

 その時。

 ふと、
 一冊の本が目に入った。

 きれいなイラスト。

 キラキラした表紙。

 王女様みたいな女の子。

 王子様みたいな男の人。

 ……なんだろう。

 これ。

 吸い寄せられる。

「ゲームやろー!」

 シオンちゃんが呼ぶ。

 私は、
 おそるおそる本を指差した。

「あの……」

 ーーーーーーー

「ミミ、これ読んでみたい」

 リコちゃんが、
 すぐフォローしてくれた。

「シオンちゃん」

 小声。

「ミミちゃんのママって、
 すっごく厳しいんだ」

「マンガとか本とか、
 買ってもらえないの」

「だからゲームは二人でやろ?」

「えっ、いいよ!」

 シオンちゃんが笑う。

「好きなの読んで!」

 そして――。

 私は、
 初めてライトノベルを手に取った。

 ……面白い。

 なにこれ。

 すごい。

 恋愛。

 胸が、
 ドキドキする。

 主人公が告白されるシーンなんて。

 素敵すぎて。

 きゅうっと胸が苦しくなる。

「きゃあっ……!」

 思わず声が出た。

 やばい。

 これ。

 楽しすぎる。

 止まらない。

 ああ。

 今日、
 絶対眠れない。

 リコちゃん。

 誘ってくれてありがとう。

 本気で、
 そう思った。

 やがて。

 シオンちゃんのママが帰ってきた。

「あら?」

 優しそうな声。

「珍しい子ね」

「ミミちゃんっていうの?」

 にこっと笑う。

「また遊びにいらっしゃい」

 ……優しい。

 怒らない。

 すごい。

「はい!」

 私は思わず言った。

「またお邪魔させてください!」

 そして――。

 つい。

 本音が出た。

「……シオンちゃんのおうち」

 ーーーーーー

「リラックスできて最高です!」

 …………。

 言っちゃった。

 やば。

 でも。

 ほんとだった。

 慌てて時計を見る。

 ――危ない。

 もう帰る時間!

 遅れたら。

 ママに叱られる。

 走らなきゃ。

【日記】7月3日 晴れ

 今日は、
 リコちゃんとシオンちゃんと遊んだ。

 いろいろ話せて、
 楽しかった。

 シオンちゃんの家にも行かせてもらって、
 良い経験ができた。

 また、いっしょにあそびたいな。





◇◆◆

 ……それにしても。

 あの本、
 続きが気になる。