その夜、
眠れなかった。
布団の中、
天井を見ながら考える。
もし。
本当に。
パパがママを──。
ぶんぶん首を振る。
違う。
そんなわけない。
でも。
胸がざわざわする。
落ち着かない。
頭の中で。
ママの声。
運転手の声。
パパの顔。
全部ぐちゃぐちゃになる。
そして。
気づいた。
私、前にもこうだった。
先生のこと。
リコちゃんのこと。
ママのこと。
何が本当か分からないまま。
流されて、
嘘をついて、
全部、壊れた。
だから。
今度は違う。
──ちゃんと調べる。
真実を知る。
生き残るために。
***
翌日。
ミミはノートを開いた。
表紙に、大きく書く。
「ミミ探偵ノート」
少しわくわくした。
でも。
こわい。
もし本当にパパが悪い人だったら?
震える手で書く。
【あやしいこと】
・事故の運転手がお金をもらっていた
・「依頼」と言っていた
・深夜の電話
・保険金の話
・事故の日の予定を聞いたら変だった
書いてみると。
思ったより多い。
胸がぎゅっとなった。
***
チャンスは突然きた。
日曜日。
パパがコンビニへ行った。
「ミミ、すぐ戻るからな」
玄関が閉まる。
ドクン。
心臓が鳴る。
鍵をかけた。
上と下の鍵、両方。
今だ。
わたしは立ち上がった。
パパの部屋。
入ったこと、ほとんどない。
少し男くさい匂い。
机。
スーツ。
ぐちゃぐちゃの書類。
罪悪感。
でも。
止まれない。
ーーーーーー生き残るには、真実を知らなきゃ。
引き出しを開ける。
レシート。
コンビニ。
ガソリン。
スーパー。
普通。
……何もない。
その時。
一枚の紙。
病院の近くのコンビニ。
日付を見る。
事故の日。
え?
なんで?
パパ、仕事じゃなかったの?
心臓が跳ねる。
震える指で、ノートにメモ。
「事故の日、病院近くにパパはいた」
***
次に、
棚。
古い通帳。
見ちゃダメ。
分かってる。
でも。
開いた。
息が止まる。
大きなお金。
何十万。
出金。
続いてる。
そして。
振込。
知らない名前。
『タサカ』
え。
誰?
運転手?
分からない。
でも。
怖い。
怖い。
ページを閉じた。
手が震える。
***
その時。
ガチャ。
玄関での音だ。
パパが帰ってきた!!
鍵をかけておいて良かった!!
時間をかせげる。
心臓が飛び出そうになる。
慌てて通帳を戻す。
引き出し、
閉める。
走る。
リビング、
セーフ。
「ミミ、ただいまー」
パパだ。
コンビニ袋。
笑顔。
いつも通り。
「アイス買ってきたぞ」
優しい。
……なのに。
怖い。
少しだけ、
知らない人みたい。
***
数日後。
わたしは新しい作戦を考えた。
録音。
スマホを録音モードにして机の下に置く。
パパが電話する時間。
待つ。
ドキドキ。
罪悪感。
でも。
知りたい。
なかなか眠れなかった。
次の日、スマホを回収した。
学校から帰って、
パパがいないのを確かめて、
録音を聞く。
雑音。
テレビ。
沈黙。
そして。
パパの声。
>「だから待ってくれ」
どきっ。
「保険金が入ったら払う」
息が止まる。
「……約束が違う」
誰?
誰と話してるの?
その次。
小さい声。
でも。
確かに聞こえた。
「もう事故の話は終わっただろ」
頭が真っ白になる。
事故。
やっぱり。
関係ある?
スマホを落としそうになった。
怖い。
怖い。
でも。
止まれない。
もう。
知らないふりはできない。
わたしはノートを開いた。
そして書く。
【ミミ探偵ルール】
①あわてない
②証拠を集める
③すぐ信じない
最後に。
震える字で書いた。
「生き残るには、真実を知るしかない」
【日記】10月3日 晴れ
パパを信じたい。
でも。
もし本当に悪い人だったら。
わたしは、どうしたらいいんだろう。



