夜風にさらわれたお姫様


コンコン。


「榴愛ー? 起きてるー?」

「みお!」

障子が開き、心桜が顔を出した。

「おはよ」

「お、おはよう……」

「ふふ、すごい顔」

「だって……!」

榴愛は再び頭を抱えた。

「なんでみおが裏社会にいるの!?」

「それは追々説明するから。とりあえず朝ごはん行こ」

「えぇ……」

半ば引きずられるように部屋を出る。


廊下は広く、和風旅館のようだった。

「すご……」

「本部邸だからね」

「本部……」

改めて聞くと怖い。


階段を下りると、広間から賑やかな声が聞こえてきた。

「お、起きた」

「姫ちゃんおはよー!」

「よく眠れた?」

組員たちが普通に話しかけてくる。

思っていたより怖くない。

というより、普通の人たちみたいだった。

「お、おはようございます……」

榴愛がお辞儀すると、数人が「礼儀正しい……」と小声でざわつく。


「座れ」

低い声。

見ると、煌夜が広間の奥に座っていた。

黒シャツ姿。

朝なのに既に格好良いのが悔しい。

「……おはようございます」

「おはよ」

煌夜は自然に隣を指差した。

「ここ」

「えっ」

「座れって」

周囲の視線が一気に集まる。

榴愛は緊張しながら煌夜の隣へ座った。


その瞬間。

「……」

「……」

組員たちが静かになる。

「な、なんですか」

「いや」

駿がニヤニヤ笑う。

「煌夜の隣に女座るの初めてだから」

「ぶっ……!?」

榴愛はむせた。

煌夜は平然としている。

「騒ぐな」

「いや無理だろ」

「歴史的事件だぞ」

「赤飯?」

「炊く?」

「やめろ」

煌夜が呆れたようにため息を吐く。

榴愛は顔が熱くなった。

なんでこんな注目されてるの!?