去り際。
竜人は一度だけ榴愛を見た。
「お姫様」
「……っ」
「気を付けろよ」
意味深な言葉を残し、去っていく。
静寂。
広間の空気が重い。
榴愛は震えていた。
怖い。
あの人、本当に危険だ。
すると。
ぐい。
「きゃっ」
煌夜が榴愛を抱き寄せた。
「見るな」
低い声。
「……煌夜」
「大丈夫」
そう言って榴愛の頭へ顔を埋める。
珍しい。
まるで、自分を落ち着かせるみたいに。
「……あいつ嫌い」
ぽつり、と煌夜が呟いた。
榴愛は少し驚く。
「珍しいね」
「昔から気に食わねぇ」
依吹が苦笑した。
「犬猿の仲ですからね」
「それ以上だろ」
駿も呆れている。
煌夜は榴愛を抱いたまま動かない。
榴愛はそっと煌夜の背中へ手を回した。
「……大丈夫」
煌夜が少し目を細める。
「怖かっただろ」
「……ちょっとだけ」
本当はかなり怖かった。
でも。
今、一番怖いのは。
煌夜が傷付くことだった。

