「……月夜の牙戦、始まるぜ」
黒崎組の男がそう言い残して去ったあと。
帰りの車内は静かだった。
榴愛は窓の外を見ながら、ぎゅっとぬいぐるみを抱き締める。
怖い。
あの男たちの目。
完全に敵意だった。
すると。
「榴愛」
「……なに?」
煌夜が隣で低く呼ぶ。
「怯えすぎ」
「……だって」
「大丈夫」
その言葉は何度も聞いている。
でも今回は少し違った。
煌夜自身も警戒しているのが分かる。
榴愛は小さく俯いた。
すると。
ぐい。
「きゃっ」
突然、煌夜が榴愛を引き寄せた。
そのまま肩へ抱き込まれる。
「煌夜……?」
「今はこれで我慢しろ」
「……?」
「キスしたら止まんなくなる」
「っっ!!?」
榴愛の顔が一気に熱くなる。
前に座っていた透が小さく咳払いした。
「……煌夜さん」
「悪ぃ」
全然悪そうじゃない。
榴愛は顔を覆った。

