夜風にさらわれたお姫様


するとその時。


遠くから視線を感じた。

榴愛が振り返る。

黒服の男たち。

こちらを見ている。

空気が変わった。

煌夜の表情が消える。

「……煌夜さん?」

「榴愛、こっち」

低い声。

先ほどまでの甘い空気が一瞬で消えた。

男たちがゆっくり近付いてくる。

榴愛の背筋が凍った。

「黒崎組……」

煌夜が静かに呟く。


その瞬間。

男たちが走り出した。

「っ!」

榴愛の手を引き、煌夜が走る。

「煌夜さん!?」

「下向くな、走れ!」

鼓動が速い。

怖い。

でも。

煌夜の手は強く、離れなかった。

裏社会。

その現実が、再び榴愛へ牙を剥き始めていた。