夜風にさらわれたお姫様


食事後。


榴愛は心桜に連れられて屋敷を案内されていた。

「ここがPC室」

扉を開けると、大量のモニターが並んでいた。

「すご……」

「監視とか情報収集とか色々」

「みお本当にハッカーなんだ……」

「まぁね」

心桜は得意げに笑う。

「榴愛は?」

「え?」

「怖くない?」

突然聞かれ、榴愛は少し黙った。

「……怖いよ」

裏社会。

組織。

抗争。

全部知らない世界だ。

「でも」

榴愛は小さく笑う。

「みんな思ってたより優しい」

心桜は少し驚いた顔をした。

「普通、もっと怖がるけど」

「だって本当に怖い人ばっかりなら、みお笑ってないもん」

「……」

「煌夜さんも、怖いけど優しいし」


その瞬間。

ガタン。

背後で音がした。

振り返ると、煌夜が立っていた。

「……」

「……」

気まずい。

今の聞かれた!?

煌夜は数秒沈黙し、ふっと笑った。

「盗み聞きじゃねぇ」

「そ、そうですか……」

「依吹探してたら聞こえた」

「……」

絶対気まずい。

榴愛は顔を逸らした。


すると。

「榴愛」

「は、はい」

「昼、街出るぞ」

「え?」

「服買う」

「服?」

「お前着替えねぇだろ」

「あ……」

確かに。

昨日のままだった。

「でも悪いです!」

「別に」

煌夜は当然のように言う。

「必要経費」

「いや絶対違う……」

「行くぞ」

完全に決定事項だった。