遼の手の甲に自身の手を重ねる結菜の胸に熱く芽生えているのは、陶酔感のある情欲だった。緩く開かれた唇から、吐息が漏れる。
「ダメだよ、橘」
冷静で落ち着いた遼の声が、結菜の無音だった世界を揺るがした。急激に上がっていた体温が、上から大量に降ってきた冷たい液体によって瞬く間に下がっていく。
意識がどこかに飛んでいた結菜は、その冷たさにハッと我に返った。視界が開け、見えた光景に鮮明な色がつく。騒がしい声も聞こえてくるかと思ったが、なぜか耳は何も拾わなかった。
結菜の頬を遼の手が滑った。その手が真っ直ぐ結菜の手首を掴む。冷たく濡れている。遼は結菜のバッグと結菜にあげたハンカチをまとめて手にして、掴んだ結菜の手首をグッと強く引っ張った。
訳も分からず遼に連れられる結菜の目に、遼の前に置かれていたグラスが空になっているのが映り込んだ。
身体がぶるりと震えた。髪の毛からポタポタと雫が垂れていた。肌に服が張り付いていた。結菜は顔を触った。濡れていた。
唐突に理解した。何をされたのか、理解した。自分は遼に、頭上からドリンクをぶっかけられたのだ。場が静まり返っていた理由も、説明されずとも理解した。
「外の空気、吸ってくるね」
居酒屋を出る直前、呆然とする幼馴染たちを振り返った遼が、一人変わらない調子で言った。返事を待たない遼に連れ出される結菜は、びしょ濡れのまま外気に晒された。
外の空気を吸って吐くと、遅れて自分のしでかした行動が脳内を駆け巡った。顔だけでなく全身が燃えるように熱くなる。身体にまとわりつく水分が、一瞬で蒸発しそうなほどに熱くなる。今すぐ遼の手を振り払って逃げ出したい衝動に駆られた。酔いはすっかり醒めてしまっていた。
「あ、ふ、福原くん、ごめん、私、あんな、気持ち悪いことして、本当にごめん。もう絶対、しないから」
「ダメだよ、橘」
冷静で落ち着いた遼の声が、結菜の無音だった世界を揺るがした。急激に上がっていた体温が、上から大量に降ってきた冷たい液体によって瞬く間に下がっていく。
意識がどこかに飛んでいた結菜は、その冷たさにハッと我に返った。視界が開け、見えた光景に鮮明な色がつく。騒がしい声も聞こえてくるかと思ったが、なぜか耳は何も拾わなかった。
結菜の頬を遼の手が滑った。その手が真っ直ぐ結菜の手首を掴む。冷たく濡れている。遼は結菜のバッグと結菜にあげたハンカチをまとめて手にして、掴んだ結菜の手首をグッと強く引っ張った。
訳も分からず遼に連れられる結菜の目に、遼の前に置かれていたグラスが空になっているのが映り込んだ。
身体がぶるりと震えた。髪の毛からポタポタと雫が垂れていた。肌に服が張り付いていた。結菜は顔を触った。濡れていた。
唐突に理解した。何をされたのか、理解した。自分は遼に、頭上からドリンクをぶっかけられたのだ。場が静まり返っていた理由も、説明されずとも理解した。
「外の空気、吸ってくるね」
居酒屋を出る直前、呆然とする幼馴染たちを振り返った遼が、一人変わらない調子で言った。返事を待たない遼に連れ出される結菜は、びしょ濡れのまま外気に晒された。
外の空気を吸って吐くと、遅れて自分のしでかした行動が脳内を駆け巡った。顔だけでなく全身が燃えるように熱くなる。身体にまとわりつく水分が、一瞬で蒸発しそうなほどに熱くなる。今すぐ遼の手を振り払って逃げ出したい衝動に駆られた。酔いはすっかり醒めてしまっていた。
「あ、ふ、福原くん、ごめん、私、あんな、気持ち悪いことして、本当にごめん。もう絶対、しないから」



