手を離さず、こちらも見ない遼の機嫌が悪いと感じた結菜は、早口に謝罪を述べた。誰だって気持ち悪いと思うはずだ。いきなり指を触って、その指を自分の頬に押し付ける奇行を目の当たりにすれば。
他の幼馴染だって見ていたかもしれない。今頃話題にされているかもしれない。気まずくて、恥ずかしくて、もうきっと、彼らとは目も合わせられない。いくら幼馴染だとしても、結菜の暴走行為には引いているに違いない。このまま戻らずに帰ってしまいたい。連絡も絶ってしまいたい。
この世の終わりみたいな蒼白な顔で、結菜は遼に引っ張られ続けた。遼の指が触れているのに高揚するほどの余裕は、今の結菜にはなかった。居酒屋を出てから喋ってくれない遼が何を考えているのか分からず、結菜の中で焦りばかりが募っていく。
居酒屋の小さな駐車場に、一台の車が停まっていた。遼は車に向かい、慣れた手つきで鍵を開けた。後部座席のドアを開いた遼が、動揺している結菜を車に押し込む。後から遼も乗り込んできて、彼の背後でドアが閉まった。状況が上手く飲み込めない。暗くて狭い車内でパニックになる結菜は、気づけば遼に組み敷かれていた。
息が上がる。胸の鼓動がうるさく響く。身体が危険を知らせている。結菜は咄嗟に抵抗を試みるが、両手が動かせない。手に意識を向けた。自分の頭上で重ねられ、遼に片手で拘束されていた。びくともしない。逃げられない。
「あ、あの、福原くん──」
瞬間、顔に何かが触れた。口を噤む。息を呑む。遼の指だった。指は結菜の肌を滑っていく。目や鼻、唇のパーツの位置を確かめるように。
暗くて互いの顔はよく見えない。視覚の情報がほぼ得られないため、肌に触れる指先に神経が集中してしまう。束縛する手に容赦はないのに、顔を滑る指先は壊れものを扱うように繊細だった。
だんだん力が抜けていく。危うい状況なのは変わらないのに、遼が触れた箇所から順に熱が宿り、結菜の思考力を酩酊させる。
他の幼馴染だって見ていたかもしれない。今頃話題にされているかもしれない。気まずくて、恥ずかしくて、もうきっと、彼らとは目も合わせられない。いくら幼馴染だとしても、結菜の暴走行為には引いているに違いない。このまま戻らずに帰ってしまいたい。連絡も絶ってしまいたい。
この世の終わりみたいな蒼白な顔で、結菜は遼に引っ張られ続けた。遼の指が触れているのに高揚するほどの余裕は、今の結菜にはなかった。居酒屋を出てから喋ってくれない遼が何を考えているのか分からず、結菜の中で焦りばかりが募っていく。
居酒屋の小さな駐車場に、一台の車が停まっていた。遼は車に向かい、慣れた手つきで鍵を開けた。後部座席のドアを開いた遼が、動揺している結菜を車に押し込む。後から遼も乗り込んできて、彼の背後でドアが閉まった。状況が上手く飲み込めない。暗くて狭い車内でパニックになる結菜は、気づけば遼に組み敷かれていた。
息が上がる。胸の鼓動がうるさく響く。身体が危険を知らせている。結菜は咄嗟に抵抗を試みるが、両手が動かせない。手に意識を向けた。自分の頭上で重ねられ、遼に片手で拘束されていた。びくともしない。逃げられない。
「あ、あの、福原くん──」
瞬間、顔に何かが触れた。口を噤む。息を呑む。遼の指だった。指は結菜の肌を滑っていく。目や鼻、唇のパーツの位置を確かめるように。
暗くて互いの顔はよく見えない。視覚の情報がほぼ得られないため、肌に触れる指先に神経が集中してしまう。束縛する手に容赦はないのに、顔を滑る指先は壊れものを扱うように繊細だった。
だんだん力が抜けていく。危うい状況なのは変わらないのに、遼が触れた箇所から順に熱が宿り、結菜の思考力を酩酊させる。



