「……夜野は、今、ちゃんと寝れてる?」
えっ、と弾かれたように顔を上げ、月城を見た。
彼の表情には怒りや呆れもなく、ただ私を心配しているようだった。それも、目を逸らしたくなるほど純粋に。
「すっごく疲れた顔してる」
不意をつかれたからか、脆くなっていたところからゆっくり崩れていって。
「――あ」
気づけば涙が零れていた。
「こっち」
そのまま手を引かれ、ふたりぶんの足音だけがする廊下を進んだ。他の人に見られたらどうしようとか梨々花たちに作業押しつけちゃったとかまともに考えてる余裕もなく、視界がぐじゃぐじゃでどこに向かっているのかもわからないけれど、手から伝わるぬくもりに導かれるように自然と足が動いた。
階段を登ってガチャ、と音がしたと思ったら風が前髪をさらった。
「なんで、屋上……」
「学祭準備期間だから解放されてるんだってさ」
ほら、と促され、初めて屋上に降り立った。まだ太陽は照りつけていて暑いけれど、風のおかげでいくらかマシに思えた。



