――それならなんで私には音が降ってくるの? 私が形にしなかったらこの音たちはどこに行くの?
選ばれなかったくせに中途半端な才能だけもった私は一体どうすればいいのか。
答えが見つからないまま、親に見つからないようにひっそりと音を紡ぐ日々が続いた。そうしないと音に押し潰されると、経験として知っているから。
そんな私に転機が訪れたのは、中学校に入学すると同時にスマートフォンを買い与えられたときだった。
何気なくTikTokを観ていたら、ある人の弾き語り動画が流れてきたのだ。
「わ、すてき……!」
これがLuneさんとの出会いだった。
花瓶に生けられたドライフラワー、くるくると回る照明、テディベア、ベッドのシーツ。そしてそれらをあたたかく包み込む自然光。
部屋にあるものでこんなにも洗練されたものが創れるのかと感動した。
そしてなによりも惹かれたのが彼女の歌声だった。
高音が美しく澄んでいて、どこまでも伸びていきそうで。あっという間に魅了された。
そんな純水のような声と雰囲気がぴったりと合っている曲。フルはYouTubeに投稿されているというのでリンクから飛んでみると、なんとそれは彼女自身が作詞作曲したものだった。さらに驚いたのは、彼女がどこにも所属していないアマチュアのシンガーソングライターだったこと。



