――「うん、頑張って。――――ラ」
ふと、月城のことを思い出した。
別れ際の彼の口元を見て、綺麗な弧を描くんだな、と思った。夜空にぽつんと浮かぶ三日月みたいで、控えめでも、確かにそこにあって。――あ。
降る。降る。降ってくる。
黄色と緑と青。
月夜を思わせる色を孕んだ音が、私のもとへ降り注ぐ。
流れ星のような軌道を描きながらも、強く、そして儚く。
――歌おう。
そう、録音ボタンをクリックした。
★
音が枯れたときにはすでに日が傾いており、全身が汗ばんでいた。自身を落ち着かせるようにはぁ、と息を吐く。アドレナリンが切れたのか、一気に暑さが押し寄せてきた。服に汗が染み込んでいて気持ち悪い。酸素の足りていない頭でクーラーをつけ、椅子に腰掛ける。こんな身体じゃベッドに倒れ込むのには抵抗がある。が、シャワーを浴びる気力はなかった。
今は6月下旬。
幼い頃は冷房装置を使わなくてもやっていけてきた気がするが、地球温暖化が進んだ今では夕方でも十分暑い。
夏の創作はかなりハードだ。
エアコンの風の音が入ると整音がより面倒になるからクーラーなしで歌わないといけないし、録音しているときは集中していて暑さにも喉の乾きにも鈍感になるから熱中症に気をつけなければならない。



