星屑の唄【期間限定公開】

 結局奢る奢られる論争は、会計のときに先にお金を出した月城が勝利し、はい、と口元に冷やしパインをあてがわれた。絶対に引く気のない月城から遠慮がちに受け取って1口かじると、パインの甘い果汁が口の中に広がって喉まで満たされた気がした。すると彼も満足したようで、そっと口角を持ち上げた。かつて見た三日月のような笑みだった。


      ★


 すっかり日も暮れ、辺りを灯すちょうちんが存在感を示しだした頃。

 私たちが来たときよりも人が増え、肩が触れるほどの距離にいなければ簡単に人波に呑まれてしまいそうなほどで、夜になったというのに気温も上がっている気がする。

 これじゃあスピカなんて見つかりっこない。さっき屋台を回るときだってそれとなく探してみたが、それらしい人物は見当たらなかった。


「夜野、こっち」

「うん」


 そんな中、私たちは花火が見やすい所へと移動していた。

 どうやら月城は人波を縫うのが得意らしい。彼の後ろに続くと不思議なことスイスイと海を泳ぐように進めるのだ。こんなところで特技が発覚するなんてちょっと面白いなと思っていると、少しひらけたところに辿り着き、そこに収まった。

 目の前に背の高い人がいないのでこれなら十分花火が見られるだろう。

 さっきよりも服越しに月城の体温を感じるが、今はそこにちゃんと彼がいるのだと、かえって安心した。


 それから程なくして、開始を告げるアナウンスとともに花火が空に咲いた。