配信終了後、幼馴染実況者の本性が悪すぎる


週明け。
玄関から出ると、見慣れた人物が門の前に立っていた。

「凪、おはよう」

そう声をかけると、凪が不機嫌そうな表情でこちらをみた。

さらりとした艶やかな黒髪。少しだけ長めの前髪から覗く切れ長の目。中世的な顔立ちは整っていて、両耳にイヤホンをつけ、スマホ片手に気だるげにしているその佇まいすら、どこか絵になる。
着崩した制服、少し緩んだ紺色のネクタイも、おしゃれに見えて、ちょっとずるい。

そう。この男、魅力的なのは声だけじゃない。
容姿もすこぶる見目麗しい。
たぶん、顔出しなんてしようものなら、
私、ナギガチ恋ファンから刺される気がする。

「遅い」

イヤホンを外した凪に、低い声で言われる。
その口元は不機嫌さを隠すこともなく結ばれている。

「ごめんって!前髪が定まらなくて!」

「別にどんなでも変わんねーだろ」

「めちゃくちゃ変わりますー!乙女心のわからんやつめ!」

「わかりたくもねー。てか、どうでもいい」

「むかーー!」

いつかその前髪、引っこ抜いてやる……!
ジロッと睨みつけながら、横に並んで駅まで歩き出す。

私と凪は今年の春から高校一年生になった。
学校も同じで、こうして毎朝一緒に登校している。

とはいえ、私たちは別に付き合っているわけじゃない。

この前「なぎふぅチャンネルの質問コーナー」で答えたが、本当にただの幼馴染だ。

なら、なぜ毎朝一緒に登校しているのか。
深い理由は、特にない。
小学生の頃から、家を出ると当たり前みたいに凪がいて、一緒に学校に行く。
気づけばそれが普通のことになっていた。
それは、高校生になった今も変わらない。

「凪、次のゲーム何にするか決めた?」

電車に揺られながら、凪は片手で吊り革を掴んで、もう片方の手でスマホを眺めている。
そんな凪を見上げながら、私は尋ねた。

「まだ。とりあえず、俺の鼓膜が死なねぇ程度のホラゲ探してる」

「……? どゆこと?」

キョトンと首を傾げた。

「脅かし要素多すぎたら、お前が叫びすぎて俺の鼓膜が死ぬ」

「なっ……!」

そういうことかい!
再びジロリと見上げる。
けれど、凪にはノーダメージだ。涼しい顔で、スマホをポチポチしている。腹立たしい。

たしかに、叫びすぎてうるさい自覚はある。
けど、怖い場面に遭遇すると、
先に身体の方が反応してしまうのだから仕方ない。

配信のただし書きに、
※音量注意して下さい。ゲームの音より、フウの叫び声がデカいため。

と、表示するようになったのはいつからだろうか。
視聴者からもよく、“フウの声込みでの脅かし要素あり”と言われている。
むむっと頬を膨らませながらスマホを操作する凪を睨み上げた。