配信終了後、幼馴染実況者の本性が悪すぎる

“なぎふぅゲーム実況チャンネル”

それは、私――佐倉楓花(さくら ふうか)と、相方実況者・早瀬凪(はやせ なぎ)が、中学生の時に始めたゲーム実況配信チャンネルだ。

つい先日、登録者数十万人以上達成。
気づけば、固定ファンもついていて、
こうして配信を始めれば一定数みにきてくれる人がいる。

顔出しなしの、声だけ配信。
最近は、プロのイラストレーターさんにお願いして、
私達を模したゆるーいキャラクターイラストを作ってもらった。それからさらに伸びた気がする。

私と凪は同い年の幼馴染。
小1の時から、私たちは中学3年までずっと同じクラス。もはや奇跡レベル。そして、家も近所。
気づけばずっと一緒にいる、腐れ縁みたいな関係だった。

「――今日やるゲームは」

「放課後に学校に閉じ込められた主人公達が、拾ったアイテムを駆使して怪異から逃げつつ、
夜の学校を脱出するゲームです……!!」

画面に、でてんと映るのは、古い旧校舎らしき建物のイラスト。ちょっと前に流行ってたホラゲー要素も含んだ脱出ゲーム。
不協和音の不穏な音楽が流れている。

『結構怖そう。フウちゃん大丈夫?』

耳元で囁くように聞こえる柔らかな凪の声。
喉が妙にむず痒くなる。

《すぐフウちゃんの心配するナギくん優しい》
《フウちゃん!ナギくんにいっぱい頼ってこ!》

即座にコメント欄がナギのことで埋まる。

「大丈夫だよ……! 前回のような失態はしない……!」

『どうだろ。フウちゃん、すぐ死地に赴こうとするからなぁ』

「ナギーー!好きで死んでるわけじゃない……!」

《www》

いつものお決まりの掛け合いに、
コメント欄が草で埋まったところで早速実況を開始する。

そして――開始五分。

『あっ、なるほど。ここに、隠れる場所があるのか』

「えっ、ちょ。まって、まって…!!
なんか…足音聞こえない!?」

『フウちゃん、敵来てるっぽい。
とりあえず、そのロッカーに隠れよっか』

焦る私の声に重なるように放たれる柔らかくも冷静すぎる声。

敵の回避方法、アイテムの使用意義、
マッピングなどなど。
即座にゲームの全体の攻略を始める凪。

毎度のことながら、スマートなプレイ。

とは、対照的に。

「ぎゃあああっ!!
待って!!追いかけられてる…!!
こっちは丸腰なんですがっ!?
赤子同然の女子に対して容赦なすぎでは!?」

余裕なんて全くない私。

それに対して、

《ぎゃあああw》
《叫び方(笑)》
《でたでた。死地に赴くスタイル》
《しかも丸腰で(笑)》

ぐぬぬ。うちの視聴者が容赦なさすぎる。
認めたくはないけれど、数年ゲーム実況してて気づいた。どうやら私は――ゲームに関して、ポンコツみたいなのだ。

それに加えて、運もない。

いつも引き当てるのは雑魚アイテムばかりだし、私の意志とは関係なしに、
地雷原をこれでもかと踏み抜いていくスタイル。偶然入った部屋が敵の巣窟だったり、あまり当たらないトラップで瀕死になったり。

そんな私が、何だかんだで数々のゲームをクリア出来た理由。

それは――

『フウちゃん、
ちょっと目を離した隙にHP少な!』

「ううう。面目ないデス……」

すると、隣に来た凪のアバターが
ポイっとアイテムを落とした。

『はい。この回復アイテム使って』

「ナギ様………!!」

すぐにぐびぐびドリンクを飲むモーション付きで回復する我がアバター。

《ナギ様ナイスー!!!》
《優しい。尊い》

コメント欄、大盛り上がり。

ドジでポンコツな私と、
スマートプレイでサクッと攻略法をみつける凪。しかも、こうやっていつも優しくフォローしてくれる。

そんな凪は、ファンの間で紳士な“王子様実況者”と呼ばれてる。

どんなにつまずきかけても、
この凪の神アシストがあるから、今までどうにかゲームをクリア出来た。

そのあと。

『あっ、フウちゃん、そこ物陰に隠れて』

「うぇえっ!?ちょっ、ま……っ!」

結局、避けきれずダメージを喰らう。

『あっ。けっこーダメージ喰らった感じか。
はい、これ飲んで』

責めもせず、冷静にさらりと再び回復アイテム渡す凪。

「ナギ様、すみません…」

『いえいえ。
あっ、フウ別の敵くるからもっかい隠れて』

不意打ちの“フウ”呼び。
配信中は、常に“フウちゃん”って呼ぶ凪が、
ほんの少し余裕ない瞬間にみせる呼び方。

呼ばれた瞬間、思う。
あっ。これ、くるなって。