配信終了後、幼馴染実況者の本性が悪すぎる


人は誰しも少なからず、“表と裏の顔”があると、私は思う。

――週末の20時45分。

パソコンを再起動させた。
最近やっと届いたゲーミングチェアに腰掛けると、程よい硬さのスプリングが心地よく身体を押す。
ああっ。やっぱ最高。
ちょっと奮発しただけのことはある。

そう思いながら、
お気に入りの水色のヘッドフォンを手に取る。パステルカラーの人気色。これも、ちょっと前に悩みに悩んで厳選したやつ。可愛い、優勝。

それを耳にかけるだけで、ほんの少し気分が上がる。

パソコンの再起動が完了し、
画面に表示された実況中に使う通信アプリを開く。

《ナギ 通話中》

「あっ、やっば」

その表示に慌てて通話ボタンを押す。

「あーあー、ナギー!聞こえる?」

マイク越しの相手へ声かける。
すると、

『聞こえる』

すぐに、ヘッドフォン越しに低く落ち着いた声が返ってきた。

「おっけー。あーあー。マイクよし。音量よし。ゲーム画面表示よし!そっちは?」

『こっちも大丈夫』

「おけー!コメント欄はー……てっ、ええっ!もう結構待ってくれてる……!?」

《配信楽しみ……!》
《はやくはやくー!》
《あともう少し》

ワクワクが滲み出ているその文字列を見るだけで、胸が弾む。

最終チェックをした後、
時計へと視線を移す。

20時59分45秒。

あと、10秒、9、8、7――……

右下に表示された配信ソフトへと視線を向ける。

「ナギ、準備はいい?」

『いつでもどーぞ』

「よし!じゃあ押します……!」

マウスで、配信開始ボタンをクリックする。

数秒後、
私は軽く息を吸って、マイクへ向かって高々と声を出した。

「こんばんは!フウです!」

『ナギです』

配信が始まった途端、

《なぎふぅ〜〜!!!待ってたよー!》
《ナギくん今日も声良い》
《フウちゃんの声元気もらえる!》

ばばばーっと、上へ流れていくコメントを目で追う。

「今日も始まりました〜!
なぎふぅゲーム実況ちゃんねる!本日も張り切ってまいります!」

「――って、うそ……!?
もうこんなに来てるの!?
嬉しい……! ねぇ、ナギ!」

『そうだね』

「えっ! 二時間前から待機してた人もいるの!? 早すぎない!? 二時間前って、私、普通に夕飯食べてたんだけど!?」

『俺も』

そうこう言っている間にも。

《視聴者数:4085人》
《視聴者数:4254人》
《視聴者数:4357人》

どんどん数字が増えていく。

未だにどれぐらいだと多いのか少ないのかもわからないけれど、4000人以上の人たちが、自分達を観に来てくれていることに胸が鳴る。

《今日は何するのー?》

ひとつ、コメントが目にとまる。

「ふふふ〜今日はね。脱出系にしようかなって……!前はバカゲーだったからね!」

ふふん。と得意げな声を出す。

《いいねー!》
《フウちゃんの腕の見せどころだねww》

「ちょっと……! 何で草生えてるの?
微妙に煽られてるきがするのは気のせい?」

『……ふ。気のせい気のせい』

「ナギーー!」

その掛け合いに、コメントがさらに沸いた。