それは――
“ナギ”と“早瀬凪”は別だって、ハッキリとわかる言葉で。
その凪の少しだけ苦しそうな表情に、
「……っ、」
言葉を――返せなかった。
息を呑んで黙り込む私に、
ハッとしたような顔をした後、凪が視線を私に移す。
私の表情を見たその瞬間、わずかに眉を寄せたかと思うと、軽く笑う。
「はぁ……なんて顔してんだよ」
「……どんな顔……?」
「ブサイクな顔」
「……っ」
まったく、相変わらず失礼なやつ。
いつもなら、軽く文句のひとつやふたつは言っている。でも、言葉は喉で詰まって出てこなかった。
たぶん。
凪の呆れたように私を見つめるその目が、あまりにも柔らかかったから。
何か言わなきゃ。
口を開きかけたその瞬間、
「凪〜!楓花ちゃん!ご飯出来たわよ〜〜」
部屋の向こうからおばあちゃんの声が聞こえた。
「わかった。今行く」
凪がすぐに静かな声で答える。
「メシ行くぞ」
「……あ……うん」
ドアに向かうその後に続く。
でも。
胸の奥に残ったままの痛みは変わらない。
――ねぇ、凪。
凪は……
“演じること”について、本当はどう思ってるの?
本当の自分を偽って、“ナギ”として私と配信を始めたこと、後悔してる?
私が提案してしまったことは、凪にとって重荷になってる?
ねぇ、凪。
私のせいで――本当は、凪を苦しめてない?
「…っ」
ずっと胸の奥に押し込めてきた問いを口に出せないまま。
私はその背中に向かって、心の中で問いかけることしかできなかった。


